2017年2月22日水曜日

Chapter22:一緒のクラスに

「ワタシは「光組」の担任クチートだ。
みんなよろしくね。」

クチートに引率されて、俺たち「光組」は
新入生の歓迎パーティがあるっていう大広間へゾロゾロとやってきた

「うわぁ!広~い」

中に入ってすぐ、新入生の誰かが言った

金ぴかのシャンデリアの灯りに照らされた大広間の中は、にぎやかな声で満ち溢れ
長テーブルが何列も並び、ポケモンの子供がズラッと大勢座っていた。

よく見ると、それぞれの天井から「炎」や「しずく」といった紋章入りの旗がぶら下がっている
どうやら組ごとにテーブルが分けられてるみたいだ。

「彼らは在学生。
言うなればキミたちのセンパイたちだ。」

先頭にいるクチートが言った

6つある組の在学生たち……
ざっと見た所、200人は居そうだぜ。

今ここには「シルヴァー学園」の生徒全員が集まってるってワケか
さすが新入生の歓迎パーティだけあって壮観だな。

「キミたちの席はあちらだよ。」

クチートは「光組」の旗があるテーブルを指さした

テーブルには一部だけ、がらっと誰も座っていないところがあった
俺たち新入生のためのスペースだろうとすぐ分かった。

振り返ると、他のクラスの新入生たちも続々と大広間へ入ってくる
そこには「空組」……ピィとププリンもいた

二人の姿をチラッと見た後、俺はすたこらと「光組」のテーブルに行き
新入生たちに並んで席についた

ご馳走パーティだと聞いていたが、テーブルの上には料理は何も無く
真っ白なクロスの上に立った燭台の灯が、ひたすら虚しそうに燃えているだけだった。

やがて全員が席につくと、二人のポケモンがやってきた
シルヴァディ理事長とムーランド校長だ

「シルヴァー学園へようこそ
新入生の皆さん、わたくしが理事長のシルヴァディです。」

理事長さんが話し出すと、ガヤガヤと騒がしかったのがいきなり静かになった

船の上でもそうだったけど、何ていうか「オーラがある」んだよな。あの理事長さん。
みんなを一発で黙らせる「存在力」みたいなもん……

リザードンさんもそうだった。
実力のある人ってのは、そういうフンイキが出てるんだろーな。

「在学生もご存知でしょうが……
夕刻、新入生たちを乗せた船がジャックされるという事件がありました。」

広間がどよっとざわついた

テーブルを見渡すとみんな暗い顔してやがる……
在学生も新入生も、どっちもショックを受けてるって感じだぜ
中には船での嫌な体験を思い出したのか、椅子の上にうずくまってプルプル震えてるのもいる。

オイオイ理事長さんよ……
あの忌わしい事件をほじくり返してどうすんだ

ここには「トラウマ」を抱えた新入生が大勢いるっていうのによ

「その時、恐ろしいジャック犯たちと戦った
勇敢な「5人の新入生」について、皆さんにお知らせしなければなりません。」

へ?
5人の新入生って……

「ピチュー、ピィ、ププリン、ヒトカゲ、ニャスパー
船が無事だったのはこの5人のおかげと言って良いでしょう。彼らはまさに英雄です。」

やっぱり俺たちかよ
英雄って……

俺たちが英雄……

理事長さんがそう言った直後、生徒たちが周りをキョロキョロ見回し始めた。
みんな英雄ってのがどいつなのか探しているようだ

クチートが俺を見て、向こうをクイクイと指さしている
「行ってきなよ」とでも言いたげだ

やれやれ。しかたねぇな……
俺はゆっくりと席を立って、理事長さんの方へ歩いた

その途中、みんなの視線がいっせいに俺に集まってるのを感じ
鳥肌が立つように体中がこそばゆくなった。

あっちのテーブルからピィとププリン、ヒトカゲ、ニャスパーも歩いてくる
そして俺たちは、理事長さんと校長に出迎えられた。

「彼ら5人に拍手を。」

理事長さんが高らかに言うと、広間に拍手の嵐が巻き上がった

く、どういうことだ……
俺たちが船を救った英雄だと?

そんなばかな……
実際にジャック犯を追っ払ったのは理事長さんたちだろ?
俺たちはただ逃げ回ったり隠れてたりで、ろくな活躍なんかしてねぇぞ。

そんな事は、もちろん理事長さんだって分かってるはずなのによ……

それがどういうワケなのか知らんが、すっかり俺たちはヒーロー扱いだ
みんな俺たちを称賛してくれてる。おかしな気分だぜ……

全校生徒による、はち切れんばかりの拍手を一身に浴びた末
俺たちはそれぞれテーブルへ戻ろうとした

ピィとププリンが先に帰っていく……
「空組」へ……

二人の後ろ姿を見て、俺はふと立ち止まって考えた

ここに理事長さんと校長が揃っている……
言うなら今だ……

「どうしたのだ?」

ムーランド校長が優しい声できいてきた
異変に気づき、ピィとププリンが足を止めて振り返った。

俺は思い切って声に出した

「ピィとププリンと同じクラスになりたいんだ
俺を「空組」に入らせて下さい!」

言い終わると、後ろで生徒たちがざわめきだした

「それはなりません。」

理事長さんが即座にそう言った

「ピチュー君、あなたは電気タイプでしょう?
電気タイプは「光組」……それがこの学園のルールです。
それを破って別のクラスに入られては、長年かけて作り出されたベストな教育方針に乱れが生じます。」

さらりと、あえなく俺の希望は取り下げられた

くそっ……

学園のルールだと……
この人もリザードンさんと同じような事言いやがる……

「俺とピィとププリンは幼馴染なんだ……
ずっと一緒に過ごしてきた。どうしても同じクラスになりたいんだ!」

俺はあきらめず必死に頼もうとした

「私らからも頼みます!」
「あべべべべ~!お願い理事長さん!」

ピィとププリンが両脇に立って一緒に頼んでくれた
三人同じのクラスにしてほしいと。

だが理事長さんは、意地でも首を縦に振ろうとしてくれなかった

く、ダメか……
俺の「入学案内」がどっかへ消えたことに始まり
リザードンさんに入学を邪魔され、ポケットタウンを出ていくはめになり、あげくにシージャック事件……

いくつもの理不尽と困難を乗り越えてきたその果てに
ようやくピィとププリンと一緒に、憧れの「シルヴァー学園」へやってこれたのによ……

ここにきて、またしても俺は二人と引き離されるってのかよ……
何でいつも俺だけが……

失意のあまり、俺は崩れそうになった

「理事長さん。」

そのとき、横にいたムーランド校長が口を開いた

「理事長さん、彼らはこんなに一生懸命頼んでいるのだ。
聞いてあげてもいいじゃありませんか。」

校長の声は優しくて温かかった

「ルールは絶対です。ムーランド
あなたは校長でありながら、学園の風紀を乱そうとするのですか?」

理事長さんは校長の顔をまっすぐ見て言った

その口調はいつものように冷静で、落ち着いていたが
どことなく「怒り」に満ちているようだった

「風紀や教育方針はもちろん大切でございます。
が、そこで学んでいく生徒たちの「気持ち」も同じく大切じゃありませんか。」

校長は続けた

「彼らは船の上で偉大な事をした……
であるならば、その功績には「褒美」があって然るべきです。
彼らの勇敢な行いがあってこそ、こうして生徒たちが無事に揃ったのですから。」

ムーランド校長はそう言い、俺たちを庇ってくれた

校長先生……
アンタ何ていい人なんだ!!

ほっかほかモフモフしたその姿が、安心感をかきたてるせいか
俺は今すぐ校長の体に抱きつきたくなった。

「まぁいいでしょう……
今回だけは「特例」という事にします。」

しばらく黙った後、理事長さんはそう言った。

特例……
つまりはOKってことか?

「ピチュー!一緒のクラスだって」
「よかったね~!」

一緒のクラス……やったぜ!!
俺とピィとププリンは手を繋いで喜び合った

最高だぜ……
なんて最高な日なんだ!!

「クチート先生もよろしいですね。」

校長は「光組」のテーブルに向かって言った
そこではクチートが、ちょっぴり不満そうにプイッとそっぽを向いた。

俺は持ってた「イナズマ」のバッジを校長に渡し、代わりに「葉っぱ」のバッジをもらった。

それはピィとププリンと同じ「空組」の一員である証だった。


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